概要

IT技術を活用して、大学病院の上級医と地域の医師をリアルタイムに繋ぐ遠隔内視鏡指導システムを独自に開発・運用しています。このシステムは、内視鏡画像をリアルタイムに送受信できる動画転送装置と、遠隔指導用のアノテーション装置を組み合わせたものです。これにより、遠隔地に勤務する若手医師への技術支援や教育を可能とし、人材育成や地域医療格差の是正に貢献しています。

背景/目的

2006年に胃に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が保険収載されて以降、現在では消化管全体に適用され、技術も大きく進化しています。近年では、内視鏡画質の向上や画像強調、拡大観察技術の発展、診断アルゴリズムの確立により、早期がんの発見率が飛躍的に向上し、より多くの医療機関でESDが実施されるようになりました。

しかし、高度化が進むESDを安全かつ確実に行うには、熟練した技術と経験が必要であり、自施設にエキスパートがいない場合には、専門施設での見学や研修が不可欠です。加えて、三重県では、地域枠医師が医師不足地域の医療を支えており、若手医師が技術を習得しながら質の高い医療を提供する環境が求められています。

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)やEUS(超音波内視鏡)など、より専門性の高い内視鏡手技の普及が進む中、現地での診療と指導を両立する遠隔指導システムの必要性が高まっています。こうした背景のもと、本システムは、患者が地元で高度な医療を受けられるようにするとともに、派遣された若手医師の育成を同時に実現する仕組みとして開発されました。将来的には地域を問わず、国内外での質の高い内視鏡診療の提供と、医療の均てん化に貢献すると考えられます。

実績/取り組み内容

・内視鏡の動画のリアルタイム送受信と、遠隔アノテーション機能を備えた独自システムを開発。

・三重大学と、紀南病院、桑名市総合医療センターを接続。

・医師不足地域の病院(若手医師)と三重大学病院(上級医)間での内視鏡手技の指導実績。

今後の展望

池之山洋平先生(消化器内科)を中心に、ESD支援AIの研究開発にも取り組んでおり、将来的にはAI技術との融合によるさらなる内視鏡診療・教育の効率化を目指しています。