概要
医師の事務作業のひとつである退院サマリー作成(年間約1.5万件)に対して、NTT西日本が開発した大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi」を用いて、電子カルテの自動要約による業務効率化をめざす取り組みです。
「tsuzumi」は軽量かつ高性能なLLMであり、オンプレミス環境で稼働可能なため、機微な医療情報をクラウドにアップロードすることなく、セキュアなネットワーク内で運用できます。本取り組みでは、tsuzumiが生成した要約文を医師が確認・修正することで、作業時間の短縮とアウトプット品質の維持を両立する新たなワークフローを構築します。
背景/目的
医療現場では、少子高齢化や医師不足に伴う長時間労働が深刻な課題となっており、「医師の働き方改革」は喫緊のテーマです。中でも、退院サマリーのような文書作成業務は1件あたり30分以上を要することもあり、多くの医療機関で効率化の必要性が高まっています。全国の医療機関が共通して抱えるこの課題に対して、業務効率化のための新たなアプローチが求められています。
本実証は、生成AIを活用することで文書作成の負担を軽減し、医師がより多くの時間を患者対応に充てられる環境づくりを目的としています。また、「tsuzumi」は軽量モデルであり、医療機関内のセキュアな環境で稼働できるため、個人情報を外部に出すことなくLLMの能力を活用できる点も大きな特徴です。
医療文書作成の効率化を通じ、医師の働き方改革および地域医療の質の向上に貢献することを目指します。
実績/取り組み内容
・三重大学とNTT西日本が医療DX推進に向けた包括連携協定を締結。(2024年11月1日)
・院内ネットワーク内のセキュアな環境内にtsuzumiサーバーを設置し、電子カルテと接続。
・退院サマリー作成支援に特化した追加学習を行い、専門用語の多いカルテデータへの対応力を強化。
今後の展望
・AIが生成した退院サマリーを、実際に医師が確認し、その有効性を検証していきます。
・本実証の成果をもとに、退院サマリーへの本格導入を進めるとともに、紹介状・診療情報提供書など他の文書への応用や、県内他病院への展開も視野に入れています。
