概要
医療DXを持続的に推進していくためには、現場の課題やニーズを的確に理解し、ICTやAI等の技術を活用して解決に導くことのできる実践的な人材が必要不可欠です。三重大学では、これまで医療画像ネットワークの独自構築や、遠隔医療支援システムの開発・運用など、医療DX分野における実装を先導してきました。
こうした蓄積を基盤に、今後は以下の2つの人材育成施策を柱として進めていきます
- 社会人を対象とした医療DXリカレント教育(2025年度開始予定)
- 高度専門職を育成する修士課程「デジタルヘルス専攻」(2027年度設置予定)
これにより、医療現場でのDX推進を担う中核人材を育成し、医療・ヘルスケア領域の課題解決に貢献します。
背景/目的
日本の医療現場は、高齢化・人口減少・人材不足といった構造的課題に直面しています。これに対して国は、「経済財政運営と改革の基本方針2024」や「医療DX推進工程表」に基づき、電子カルテ情報共有サービスやパーソナルヘルスレコード(PHR)の普及、AI・ICTの活用による業務効率化を強力に推進しています。
しかし、実際の医療現場では、情報系企業と医療者の間にニーズ認識のギャップが存在し、技術導入の遅れや現場不適合が医療DX推進の妨げとなっています。単なるデジタル技術の導入だけでは不十分であり、医療の文脈を理解しつつ、技術を現場に落とし込める「実装型人材」が決定的に不足しているためです。結果として、他業界に比べ、医療業界でのDX取り組み状況は非常に遅れている状況となっております。
こうした背景から、三重大学では次の2つの取り組みを開始します。
実績/取り組み内容
・医療DXリカレント教育:2025年9月ごろ開始を目標に、医療従事者・企業関係者を対象としたオンライン教育プログラムを作成中。医療DXの基礎知識から実践的応用事例までを学べる構成とし、現職者のスキルアップとリスキリングを支援します。
・デジタルヘルス専攻:2027年度の開講を目指し、医療とデジタル技術の橋渡しができる高度専門職人材の育成を目的とした専攻の設置準備を進行中。医・工・情報の複合領域にわたる横断型教育カリキュラムを構築中であり、OPT(On the Project Training)型の実践教育を中核に据えます。
今後の展望
・本教育を契機として、地域医療機関・自治体・地場産業界との連携をさらに深化させていきます。これらの教育、地域連携、産業連携の取組は、医療DX領域における三重大学全体の教育研究基盤の強化にも寄与します。 ・本専攻の新設により、現場課題を的確に捉えてAI・ICTで解決できる能力を備えた人材を育成。地域医療の質向上だけでなく、ヘルスケア産業界でのDX推進にも貢献可能な人材を輩出します。