概要
遠隔ER(Emergency Room)とは、遠隔地の医療機関とネットワークで接続し、救急専門医が現地の診療を支援できるシステムです。これにより、救急患者に対する初期対応を迅速かつ的確に行うことができるだけでなく、医療者にとっては教育・指導を受けることが可能となります。
背景/目的
救急医療の現場では、夜間や休日、また医師不足の地域において、迅速で的確な初期対応が求められる一方、専門医が常駐できないケースも少なくありません。こうした課題に対し、救急専門医が遠隔地からリアルタイムで支援できる「遠隔ER」は、医療の質を高める有効な手段として注目されています。現場の医療スタッフの負担を軽減しつつ、適切な初期対応を可能とすることで、地域間の医療格差の是正や救命率の向上が期待されています。
さらに、COVID-19の流行を経て、救急医療における教育のあり方にも課題が浮き彫りになりました。鈴木圭先生(救急集中治療医学)によると、医学生や研修医にとって、救命救急室での初期治療を体験することは、医師としての将来像に影響を与える重要な経験です。しかし、感染対策の観点から救命救急室での体験型実習は大きく制限され、講義による代替では、緊張感や患者の息づかい・顔色といった現場の臨場感を十分に伝えることが困難でした。
こうした背景から、遠隔ERの仕組みは診療支援にとどまらず、教育支援の面でもその必要性と有効性が認識されており、今後の救急医療体制を支える重要な取り組みと位置づけられます。
実績/取り組み内容
・高速閉域網を活用し、協力病院と三重大学高度救命救急センターを接続。地域の救急医療を専門的に支援。
・協力病院の高解像度ER映像、生体モニター、電子カルテシステムなどの情報を、三重大学側から遠隔で確認可能なシステムを社会実装中。
・簡易版として、ドクターカー、ドクターヘリ、コードブルー対応などでの応用も検証済み。
今後の展望
基幹病院や休日夜間診療所などへ順次導入を拡大し、地域全体での救急医療体制の強化を目指します。
